日本は世界有数の長寿国であり、国民の健康意識は非常に高い水準にあります。それに伴い、「健康食品」や「保健食品」と呼ばれる市場は巨大な規模に成長しました。しかし、一口に健康食品と言っても、その定義や法的な位置づけは多岐にわたります。 本稿では、日本の保健食品の分類、特徴、そして近年の市場動向や消費者の意識について解説します。 1. 日本の「保健機能食品」の3つの分類 日本の行政上の制度では、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められている食品は「保健機能食品」として分類されます。これはさらに以下の3つに区分けされています。 特定保健用食品(通称:トクホ) 1991年に制度化された最も歴史のある制度です。「お腹の調子を整える」や「コレステロールの吸収を抑える」など、具体的な保健の用途を表示することが許されています。安全性および有効性について、国(消費者庁)の審査を受ける必要があり、許可が出るまでには時間とコストがかかります。その分、消費者からの信頼性は最も高いカテゴリーです。 栄養機能食品 ビタミン、ミネラル、鉄、カルシウムなど、特定の栄養成分の補給のために利用される食品です。国が定めた規格基準(上限量・下限量など)を満たしていれば、特に届出や許可を受けることなく、メーカーの責任において「栄養機能食品」として販売できます。「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」といった、国が定めた定型文による機能性表示のみが認められています。 機能性表示食品 2015年4月に新設された比較的新しい制度です。「トクホ」ほど厳格な国の審査は不要ですが、「栄養機能食品」のように対象成分も限定されていません。事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示することができます。睡眠の質をサポートする、目のピント調節を助ける、ストレスを緩和するなど、多様な機能性が謳われており、市場で最も勢いがあるカテゴリーです。 2. 市場の動向と「機能性表示食品」の急成長 近年、日本の健康食品市場において最も注目すべき動向は、機能性表示食品の急激なシェア拡大です。 市場規模の拡大と多様化 制度開始当初は年間数百億円規模だった市場が、わずか数年で数千億円規模に成長しました。これは、国の審査がないため開発期間が短く、多様なニーズに対応した商品を迅速に市場投入できるためです。特に、中高年層の健康維持ニーズ(内臓脂肪、血糖値、血圧など)や、若年層の美容・睡眠・ストレスケアニーズに応える商品が多数登場しています。 企業の取り組みと消費者の選択 この制度の導入により、多くの企業が研究開発成果を商品化しやすくなりました。その結果、市場には多種多様な商品が溢れることになりました。消費者は自身の健康課題に合わせて、より細かく商品を選ぶことができるようになった一方で、表示された機能性を正しく理解し、自分に合った商品を選ぶリテラシーが求められています。 3. 日本市場の特徴と消費者の意識 「食」による健康管理 日本では「医食同源」の考え方が根付いており、薬としてではなく、あくまで「食品」として健康を管理することへの抵抗感が低いです。ヨーグルト、飲料、お茶、サプリメント(錠剤・カプセル)など、日常の食生活に取り入れやすい形状が好まれます。 高齢化社会の影響 世界で最も高齢化が進んでいる日本では、生活習慣病の予防や、要介護状態を防ぐための健康維持に関心を持つシニア層が主要な購買層となっています。 品質とブランドへの信頼 消費者は「特定保健用食品(トクホ)」のマークや、大手メーカーのブランド名を重視する傾向にあります。長い歴史を持つ企業や、明確なエビデンスを持つ商品に対する信頼は厚く、市場の安定を支えています。 4. まとめ 日本の保健食品市場は、厳格な「特定保健用食品」、手軽な「栄養機能食品」、そして多様性とスピードを重視した「機能性表示食品」の3つの柱によって支えられています。 特に「機能性表示食品」は市場を活性化させ、消費者の多様な健康ニーズに応える原動力となっています。今後は、企業の自主的な品質管理の徹底と、消費者が正しい情報に基づいて商品を選択できる環境の整備が両輪となり、より健全で持続可能な市場の発展が期待されます。
Author: 禾青株式会社
難読ワードの「酸枣仁」は認知症予防に効果あり? 漢方薬原料で食品開発目指す
6年先の2030(令和12)年、厚生労働省のデータによると、高齢者の7人に1人に当たる全国523万人が、認知症を患っていると推計される。経済損失は約9兆円に達するとの試算もあり、発症を抑えるための対策は急務だ。大阪公立大の富山貴美(たかみ)特任教授は、東洋医学の生薬などを使った安全かつ安価に摂取できる予防食品の開発を目指している。 認知症は、異常化したタンパク質「タウ」や「アミロイドベータ」が脳内に蓄積し、神経細胞を徐々に死滅させることで進行する。いったん死滅した神経細胞を元に戻すことはできないため、進行を遅らせる治療薬の開発が進むものの、高価な上、投与対象が軽症者に限られる。 こうした状況を踏まえ、富山氏は予防の重要性に着目。漢方薬を構成する生薬の一つ、「酸枣仁(さんそうにん)」といった自然由来の素材に目をつけた。「こうした素材を使った認知症予防食品であればサプリメントのように病院の受診なしで購入でき、負担減につながる」と説明する。 商品化に向け、5年前から総合化学メーカーの帝人(大阪市)と共同研究を実施。生薬の効果を確認するために認知症のマウスに投与する実験を重ね、認知機能や運動機能がどれくらい改善するかを調べた。 実験では、酸枣仁の粉末と煮出したエキスをそれぞれ1カ月間ずつマウスに投与。その後、水を張った実験用プールに放し、水面に隠された足場を見つけるまでにかかる時間を計測した。 いずれのマウスも、脳の状態と認知機能の改善が認められ、粉末を投与されたマウスの方が効果が高かった。さらに認知機能は、正常なマウスと同じ程度かそれ以上にまで改善した。 次に富山氏は、健康な高齢マウスに対し1カ月間、酸枣仁の粉末を投与したところ、細胞の老化が抑制され、認知機能も若いマウスと同じ程度まで向上したことが確認された。 富山氏は「酸枣仁には、認知症を予防して脳を若返えらせる作用があることが示された」と実験の意義を語る。ただ生薬の有効成分が何なのかは分かっておらず、今後特定を進めるという。 来年以降に予防食品を商品化したい考えで、富山氏は「認知症発症の抑制にどれほどの影響があるかを確認するための手法を確立しなければならない。課題はあるが、前向きに開発を続けたい」と話している。 (出典:産経新聞https://www.sankei.com/article/20241104-Z3QXZVWAQJPBZCH3F4H3UZLBFI/)

